ちゃんまるがゆく!【脳筋ぼっちゲーマーの実家】

すぐ脳筋プレイに走るゲーム大好きちゃんまるがアレコレを綴ります。

たまに思い出す、昔話。【雑記】

たまーに、冬の夜風やアスファルトのにおいとか、冷たさとか、吸い込まれそうな暗くて高い夜空とか

そういうものを眺めてると思い出してしまう昔話があるんです。誰にも、話したことがないけど。

私自身のために、文字におこしておこうと思う。






私が昔勤めていたとある会社。入って3ヵ月程で、別部署へ異動になりました。

当時力をいれてたその部署に私の活躍を期待して「やってみないか」と上司が声をかけてくれた異動だった。


まぁざっくり言うと、システム的な案件を任されて、検証・再現して解決策を見つける的なお仕事。

その仕事柄、部署内は新人だろうが先輩・上司も皆横並び1列でほうれんそうもばっちり、仲も良いしお互いに注意や勉強もし合う、それこそ切磋琢磨できる部署でした。


そこにね。見た目はさえないけどとっても優しくて面白い先輩がいました。


入ったばかりなのに期待に応えたくてとにかく一生懸命すぎた私に、困ったことがあればすぐ相談に乗ってくれ、わかりやすく指導してくれた。本当に優しくて面倒見の良いお兄ちゃんみたいな人。


だけどとっっても人見知りで、入ったばかりの私にはまだどこかよそよそしくて。女先輩と冗談をぶつけ合うようにして仲睦まじく話す姿がちょっぴり、私にはうらやましかったり。

私も人見知りで懐くまで時間がかかるし人を選んじゃうタイプなので、仲良くなりたいけど自分からはなかなか近づけなくて。



ある日の帰り際のこと。通勤がバスで1時間もかかる私の後ろ姿に「俺の車で良ければ送っていくよ」って先輩が声をかけてくれた。

「いや、悪いです」って答える私。通り道だからついでだよって優しく微笑む先輩。今でもその笑顔は印象にのこってる。はにかむような、笑顔。


お言葉に甘えて送ってもらうのは私なのに、缶コーヒーまで買ってくれて。寒くなりはじめた冬の夜だった。


「私、本当はもっと先輩と話したいんです」
「俺も。でも、なんか、ね」
「はい、なんか、ですね」
人見知り同士こんなぎこちない会話してた気がする。そう仲良くもなかったけど、一生懸命言葉を紡いでた。

他にも色々話したはずなのに、細かくは思い出せない。緊張してたからかな。でも楽しかったのは覚えてる。

それがきっかけで、その先輩とお互いにTwitterをフォローしあうことになって。


そこからたまに、帰りに声をかけてくれて送ってくれることが増えた。いつも、いつも優しかった。微糖のコーヒーをお供に、ちょっとしたお喋り。本当は私と帰り道逆方向なのに。


お互いに少しずつ話して、Twitterの呟きをたまに眺めながらお互いを知っていった。



知っていったつもりだった。



先輩は職場で口数がだんだん減っていった。優しくて無邪気そうなあの笑顔も。
そのかわり背中を少し丸めて歩く後ろ姿と、寂しそうにたばこを吸う横顔が増えていった。


Twitterの些細な呟きも、減っていった。帰り道のお誘いも。ほんのりあったかい微糖の缶コーヒーも。とるにたらないお喋りも。


落ち込んでいるのか、忙しいのか、わからなかった。私には。先輩へ近づけたつもりが何も知れていなかったし、気づいても手をさしのべる勇気もきっかけも、

なかった。



さすがに他の先輩も様子がおかしいと心配していたし、声をかけたり話しかけても、先輩は1番仲の良い女先輩にすら話さなかった。弱った笑顔でただ、
「疲れてるだけです!」
なんていつもの感じにしようとするだけ。

私には、そんなところへは立ち入れないと思った。心配だけれどどうしようもなかったし、私は土足で心に踏み入る人が嫌いだから、逆に自分がそうなってしまうのを恐れてた。


そんなとき、本当に久しぶりに先輩から一緒に帰ろうと声をかけてもらった。正直、迷った。聞いてしまいそうになるだろうから。誰が聞いても開けようとしない先輩の閉ざした心を、こじ開けたくなってしまいそうだったから。


力になりたい、だったのか。それをきっかけに深く仲良くなりたい下心だったのか。今はもう、わからない。


先輩はいつになく黙ってた。缶コーヒーをお互い、間を埋めるようにちびちび飲みながら車道を眺めてた。
運転する先輩の横顔を、久しぶりにこんなに近くで見た気がするなぁ、なんて思ってたら。


「人生って、クソだよなって思うことない?」
そう言った先輩の、自嘲するような笑いを含めた低い声が車内に響いて

「私も、そう思うことあります」って答えた。

あの夜。すっかり寒くなった、真っ暗な冬の夜。夜風が刺すように冷たくて、たばこの苦いにおいがしたあの夜。



それから数日後、Twitterに一言
つらい
とだけ残して


先輩はこの世からいちばん遠いところへ、いってしまった。

いろんな噂が飛び交ってた。
死人に口なし。みんな言いたい放題で腹が立った。心から悲しむ人もいるならば、野次馬根性のしみついた人の皮をかぶった化け物みたいな奴らだって世の中にはいるから仕方ないんだけど。


先輩はとってもとっても苦しんでたけど、味方もいなくて誰にも話せずに。一人きりで、きっと孤独でたまらなかったんだろうと今は思う。


私にもっと、何かできることがあったんじゃないか。
私がもっとお節介だったら。
私がもっと早く無理やりでもこじ開けてたら。

わかんない。

話を聞くだけじゃ、解決にはならない。自暴自棄を受け止めてあげたって、楽にはなれない。
喉から手が出るほどほしい答えを私があげることなんてできないし、心から苦しむ人の助けになりたいなんてただの傲慢にも思えてくる。
正解はないと思う。それでも、たまに思い出したときに考えてしまう。


先輩がそうなった本当の原因は、私にはどうすることもできなかった事だからいま考えたって仕方がないんだけど。



残ったTwitterが、不自然で。
先輩はもういない。いないけれどアカウントは残ったまま、先輩が呟いた言葉も当時のそのまま。

ただ時がそこで止まっただけみたいに。どこかに先輩はいるみたいに。

急に呟いたりしそうに錯覚してしまっても変わるわけのない画面と文字。一生外れることのない、フォロー。


たまに、今でものぞいてしまう。変わってるわけなんてないのに。
あとから後悔したって、もう遅いんだ。


だから私は、今あるものを、人を大切にしたい。大切に思っていたい。
真っ直ぐに生きていたい。素直に、後悔しないように。
大切な人を、大切だとまっすぐに想えるように。
大切な人の味方でいたい。


そう思ったはずなのに。
今の私は、そうなれているの?



つい最近とあることがきっかけでどうしても書き留めておきたくなった

私の後悔であり、思い出であり、昔話。